【産後うつ病について知ってもらいたいこと】周産期における心のケアの重要性

メンタルヘルスケア

周産期メンタルヘルスについて

皆さん、こんにちは
川崎市立多摩病院産婦人科医です。

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産後うつ病という言葉を聞いたことがあると思います。国立成育医療研究センターなどのチームが実施した調査にて、平成27-28年の妊娠中や産後1年未満で死亡した女性357人のうち、約30%の102人が自殺で、そのうち92人が産後の自殺だったことが判明しました。

お産での死亡というと出血多量によるイメージがあると思いますが、10年ぐらい前と比較すると周産期管理の向上で『産科危機的出血』による母体死亡は減少傾向にあります。

最近は産後うつ病を中心に産後に自殺するケースが増えています。しかし、これは妊婦さんなら「誰でもかかりうる病気である」と認識してほしいのです。そこで、周産期メンタルヘルスの重要性について皆さんにご理解して頂きたいと思います。

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少子化問題と周産期メンタルヘルス

 

平成27年には生産年齢の女性の就業率は70%を超えました。これに伴って晩婚化、晩産化の傾向は顕著になっています。ただ、出産後も仕事を継続するのは困難で不本意な理由で退職する女性がいるのも現実です。
マタニティーハラスメントとうい言葉が示すように職場では妊娠・出産が必ずしも喜ばしいこととして受け止められないことも多々あります。そして、仕事と育児の両立は心身の負担が大きく、慢性疲労や抑うつの原因となりやすいのです。
保育所など育児支援施設の不足から仕事を断念しなければならない場合も出てきます。子供の存在が徐々に負担に感じられる可能性も出てきます。
核家族化が進み、乳児と二人きりの時間が続くと情緒不安定になってきます。少子化社会の弊害には以下のようなものがあります。
育児ノイローゼや児童虐待が起きやすい
妊産婦の自殺の増加
妊婦の心の状態と子どもの発達への影響

児童虐待について

 

身体的虐待やネグレクトの割合は徐々に減少しています。
一方で心理的虐待が増加傾向にあります。これは、子供の面前での配偶者暴力が一因と考えられています。

虐待死の加害者は実母が最も多いです。
虐待がこどもの脳に及ぼす影響について以下にまとめてみました。

性的虐待を受けた女性→視覚野の容積の有意な減少

暴言虐待を受けた男女→聴覚野の容積の有意な増加

厳格体罰を受けた男女

→右前頭前野内側部(感情や理性を司さどうる)の容積の有意な減少
→右前帯状回(実行機能と関係)の容積の有意な減少
→左前頭前野背外側部(認知機能)の容積の有意な減少

妊婦の心の状態と子どもの発達への影響

 

O’Connorらは、妊娠32週時に質問票で得た妊婦の不安の強さが、出生後81か月(6-7歳頃)のこどもの行動や情緒の障害(過活動、情緒障害、関係性の障害)と密接に関連していたことを報告しています。

妊娠中の不安は産後の不安や産後うつ病よりも強い相関があり、O’Connorらは、この結果は胎児期に既にこれらの障害を発症するメカニズムが出来ていることを示しているのです。(プログラミング仮説) 胎児がストレスによって過剰に分泌される母親のコルチゾールに長期間さらされていることが一因である可能性があるとのべています。

以上について大雑把にまとめてみましたが、この時期のこどもたちの心の健康は、健康な母親との密接な関係が基本であり、その意味で周産期メンタルヘルスの重要性はいくら強調してもし過ぎることはないと思います。

今後の周産期医療は母と子の「命」だけでなく「心」を守ることにも目を向けていく必要があると思います。

今後、周産期メンタルヘルスの重要性について、皆様のお届けしていこうと思います。

参考図書『妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル』~産後ケア切れ目のない支援に向けて~

 

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