【産後クライシスを乗り越えるために】|夫婦で一緒にメンタルヘルスを学びましょう

メンタルヘルスケア

妊娠、出産そして育児は非常に大変なイベントなんです。

おはようございます。多摩病院産婦人科医です。
本日は、周産期の『うつ状態と不安』についてお話します。

前回、すべての妊婦さんを対象としたスクリーニング検査方法についてお話ししました。

3つの質問票を活用して、妊婦さんの心理・社会的状態を共通の尺度で評価を行います。

「育児支援チェックリスト」では、育児を困難にする背景(家庭環境、育児環境など)や要因をチェックします。

「エジンバラ産後うつ病質問票」では、うつ状態➡うつ病、不安などの症状や持続時間、家事機能や育児機能のチェックを行いなす。

「赤ちゃんへの気持ち質問票」では、赤ちゃんへの否定的な気持ちの有無や虐待のおそれがあるかどうかの有無のチェックを行います。

以上の方法を活用して、妊娠中から出産後そして育児の間を妊婦さんひとりひとりを見守り、必要があれば、経済的サポートや心理的サポートなどを介入していきます。

では、具体的に妊婦さんは妊娠前から出産後そして育児までのこころの状態はどのように変化をするのでしょうか?

順番にこころの変化を挙げて行きましょう。

妊娠前のこころの状態

・不妊治療であれば、周期毎の妊娠判定
・ホルモン薬投与によるホルモンの変動
・妊娠と身体疾患とその治療の悩み
・夫の無理解
・夫の非協力的な態度
・挙児希望の不一致
・経済的な不安
・出産後の支援体制の不安・・・

特に、35歳以上の不妊治療の方は色々と悩みが多いと思います。

妊娠中・出産後のこころの状態

・つわり、切迫流早産などの自己制御不能なこと
・周囲の協力に関する不安
・仕事・家事から離れることの失望
・出生前診断をどうするか
・死産・新生児死亡などの死別体験
・緊急帝王切開や早産など予期せぬ出産
・出産後の自己肯定感の低下や自責感の増悪
・出産トラブルによる生命危機の外傷体験
・母となる心理的変化
・ボンディング形成
・妊娠中・出産後の身体変化とホルモンの変動など

共働きの夫婦の方も多く、核家族でなかなか相談できる方が周囲にいないことで不安や
ストレスは溜まっていく一方ですね。

出産後から産褥期/授乳など育児へ

・実際に母親になったアイデンティティーの確立
・理想化された育児と現実のギャップ
・育児中心の生活スタイル
・両親との関係性の変化
・夫の産後うつ病➡最近増加傾向にあります。
・児へのボンディング形成
・未熟な育児スキル
・人工乳使用の葛藤
・乳汁分泌不全
・不十分な哺乳
・高く理想化された母親像とのギャップ
・児の発育状況・身体状況
・急激なホルモン変動
・授乳による睡眠障害
・不規則な生活サイクル
・運動不足などなど

やはり、出産後から育児段階への急激な変化が結構厳しいと私自身も感じます。
私の妻も40歳で第2子を出産していますが、育児期間中に一時的に産後うつ病にかかりま
した。

見ていて、なんとなくいつもと違うなと感じて、感情失禁も顕著になり危険だなと思い精神科受診したところ、産後うつ病でした。半年の薬物療法で治りましたが、非常に
身近な病気であると感じました。

しばらくの間は義母に育児を手伝ってもらいました。
妊娠、出産そして育児というイベントは女性の身体・こころにかなりストレスがかかる
のだと思いました。特に40歳近い方は非常にハイリスクであるとも感じました。

周産期の『脳機能不全』ともいえるのではないか?

周産期では、赤ちゃんの状態が良くない状態を『胎児機能不全』(以前は胎児仮死と呼んでいました。)といいます。

また、胎盤の状態が良くない状態を『胎盤機能不全』といいます。

この妊娠前から出産後そして育児段階での劇的な身体・心の変化についていけずに逸脱してしまう状態を一種の『脳機能不全』と呼んでもいいのではないでしょうか?

以前のパートでもお話いたしましたが、この『脳機能不全』から産後うつ病に至り自殺
する方が増加しています。

このような不幸なことにならないように周産期メンタルヘルスケアはこれからの時代に必要になってきます。

周産期の『脳機能不全』の特徴について

・脳に影響を与える生物学的変化が起きやすい
・喪失を予期したり、体験したりしやすい
・気候(雨)や気温差や季節(秋冬➡春夏)の変化に脆弱
・もともとかかりやすい体質がある
・でも全員がかかるわけではない かからないように努力は出来る
・睡眠導入薬など必要最低限の薬も有効

気持ちを改善するためのアプローチ

・規則正しい生活リズムにする。
・適切な食事と睡眠をとる。
・嗜好品の過剰摂取に注意する。
・ヨガやジムに通い、随意・自律神経をリセットする。
・家庭内葛藤などストレスを減らす。
・ペットを飼う。
・花を育てる。
・英語教室や料理教室に通う。
・認知行動療法
・うつ状態や不安への取り組み
➡喪失は必ず起こる(生死、健康、家族、お金、社会的地位・・・)を受け入れるなど

我々も、以下のような点に注意して妊婦さんの対応をしています。

・環境を整えることが患者にとって自分の話を聞いてもらえる、受け入れてもらえるという安心感につながる。
・時間や場所を決める。
・話がなかなか切れない方には、終わりの時間を前もって伝えておくことも大切
・緊急で面接を求めるときには、あらかじめ「緊急なのでいつものような時間が取れない」と伝える。
うつ状態では、思考障害によって理解力や判断力が低下している場合がある。
・否定的な言葉には敏感になっている可能性があるため、口調は穏やかに比較的ゆっくりと話すほうが良い。

一人で抱え込まないで!

まずは、一人で抱え込まずに孤独にならないということが一番です。

ヒトは大昔から社会的な動物であることが遺伝子や脳に刻み込まれています。

群れから離れ孤独になるということは『死』と直結しています。

現代社会も孤独な方が世界で増加傾向にあります。我々周囲を巻き込んでください。

産婦人科医、精神科医、助産師、保健師、メディカルソーシャルワーカーがお手伝いします。

まだまだコロナ禍は続きますが、妊婦の皆さん、今日も頑張っていきましょう!

 


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