こんにちは。
川崎市立多摩病院産婦人科医師です。
本日は、皆さんも毎日摂取していると思いますが、「甘味料」についてリサーチしましたので、皆さんに情報をお届けします。
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我々が、普段口にしている砂糖も実は甘味料に含まれます。そう、甘味料は大きく分けると❝糖質系統❞と❝非糖質系統❞の2つの系統があります。
この❝糖質系統❞の中の糖アルコールというのが人工甘味料です。皆さんも聞いたことがある、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどです。
一方、❝非糖質系統❞の中の合成甘味料が人工甘味料です。サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースなどです。
人工甘味料は食品ではないため、「食品添加物」に分類されます。カロリーオフ、カロリーゼロと記載されている低カロリー食品にはほとんど合成甘味料が使用されています。
例えば、清涼飲料水、ガム、飴、スナック菓子や加工食品などあらゆる食品に添加されています。食品の裏の表示に食品添加物が書かれているので、購入のたびに確認して頂けると良いと思います。


私は、SUNTORY GREEN DA・KA・RA 600ml®を良く飲みますが、実は人工甘味料ゼロなんですよね。
その代わり果糖(甘味料です)、ぶどうとレモンの果汁が含まれています。うっすらと甘い、不思議な甘味ですよね。


ただ、人工甘味料にもメリットはあります。カロリーを抑えて、甘味を感じることが出来る。肥満や生活習慣病の予防効果も期待できます。
キシリトールなどは口腔内で酸を生成しないので、虫歯予防にもなります。
当然、デメリットもあります。人工甘味料については現在でも論争は尽きませんし、健康への悪影響や、特に体重増加や肥満、糖尿病の発症も懸念されています。
もちろん、FDAなどが認可した人工甘味料を日本でも使用しているので、過剰摂取しない限りは健康被害は稀であると思います。
それでは、もう少し、深堀りしていきましょう。
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甘味料の分類
=糖質系統=
●でんぷん由来
ブドウ糖、麦芽糖、果糖、水飴、イソマルトオリゴ糖、トレハロース
●その他
フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、乳糖
ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール
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=非糖質系統=
ステビア、甘草(グリチルリチン)
●合成甘味料(人工甘味料)
サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース
まず、人工甘味料のうち、糖アルコールの代表、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールについてもう少し深堀りしていきましょう。
糖アルコールの人工甘味料
●ソルビトール
砂糖と比較してカロリーは約75%、甘味は約60%ぐらいです。水に溶ける時に、口の中でヒンヤリとした感触が残ります。
飴、ガム、スナック菓子で良く使用されている。
蒲鉾などの魚肉練り製品に砂糖と一緒に使用すると水分を保持しやすい性質がある。
冷凍しても変質しにくいので、成形後の食感を保持する効果もある。


●キシリトール
砂糖と比較して甘味は少ない。清涼感がある。
白樺、トウモロコシの芯などから得られるキシロースを還元したもの。
ガムに使用されることが多い。
ミュータンス菌の一部の代謝を阻害するため、虫歯予防になる。
歯の石灰化促進作用はまだ証明されていません。
虫歯の治療には直接関与はしないようです。
骨密度の改善効果は期待されている。
急性中耳炎の予防効果がある。
●エリスリトール
砂糖と比較して甘味は約70-75%
カロリーはゼロ、冷涼感がある。
一部の果物や発酵食品に含まれている。
他の合成甘味料と一緒に使用される。
腸で吸収されずに、そのまま体外へ排出される。
インスリンに影響を与えない。
口腔内の細菌に代謝されないので虫歯になりにくいので、虫歯予防になる。
続いて、人工甘味料のうち、皆さんが気にしている合成甘味料であるサッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースについてもう少し深堀りしていきましょう。
合成甘味料(人工甘味料)
●サッカリン
砂糖と比較して甘味は約600倍でさらにカロリーはゼロです。
世界初の人工甘味料です。
不溶性で、脂・油を使った加工食品に多く添加されています。
しびれるような刺激の後味で、高濃度だと苦みが強くなる。
ゼロカロリーダイエット炭酸飲料に含まれています。


●アスパルテーム
現在でも安全性・危険性の論争が盛んな人工甘味料の1つです。
日本では、味の素が開発した「パルスイート®」が有名です。


砂糖と比較して甘味は約200倍でカロリーは同じ4kcal/g
スッキリとした後味
1996年にFDAが全ての加工食品への使用を認可しました。
1983年に日本では食品添加物として認可されました。
別名は❝L-フェニルアラニン化合物❞です。
我々が経口摂取すると、小腸で吸収されます。以下の3種類に分解されます。
50% フェニルアラニン
40% アスパラギン酸
10% メタノール
フェニルアラニンは神経伝達物質の1つです。脳内でドーパミンやノルアドレナリンに合成されます。過剰摂取は脳の興奮を高める可能性はあります。
メタノールは有毒物質ですが、新鮮な野菜や果物にも存在します。しかし、ごく微量なので人体への害はないとされています。
アスパルテームにはメタノールは野菜や果物よりも少量のため、人体には影響はないと思われます。
●アセスルファムK(カリウム)
砂糖と比較して甘味は約200倍でカロリーはゼロ
スポーツドリンクに多く含まれている。
甘味が残りにくい。
他の味の❝マスキング効果❞がある。
酸と併用すると酸味と苦味を和らげてくれる。
食塩と併用すると甘味度が鋭敏になり、苦味が減少する。
ショ糖、エリスリトール、キシリトールと併用するとコク・深みが増す。
フレーバー・エンハンサー(風味強調剤)としての性質があり、コーヒー、紅茶、ココア、チョコレートなどに微量添加すると風味を引き立てる作用があります。
口腔内細菌に代謝されないので虫歯予防になる。
●スクラロース
砂糖と比較して甘味は約600倍でカロリーはゼロ
まろやかで後味もスッキリしている。
他の糖類・甘味料と併用すると甘味度が増強する傾向がある。
虫歯予防にもなる。
有機塩素化合物のうち食品添加物として認可されている。
消化管から消化・吸収されないとされていますが、尿中に10~30%は排泄されている。
消化・吸収の機序は今のところ不明で、代謝産物は脂肪組織に蓄積される。
過食を生じ肥満を引き起こす可能性がある。
消化管からインクレチンを分泌させる。インクレチンはインスリン分泌を促進する。
高温で加熱すると有害な塩素ガス(HCl)を発生する。
スクラロースの入った食材や食品を高温で加熱することは避けた方がよい。
~~でんぷん由来の❝トレハロース❞について~~
ショ糖の約45%の甘味でそんなに甘くない。
自然界の多くの動物・植物・微生物中に存在しています。
お餅やお団子が時間経過とともに硬くなるのを抑制する効果があります。
熱や酸に対する高い安定性や保湿作用、タンパク質の変性抑制作用を利用して多くの加工食品に添加されています。
耐糖能改善効果や神経変性疾患抑制効果もあります。
医療の分野では、以下の目的で使用されています。
・ドライアイ治療薬
・臓器移植時の臓器保護液
以前はトレハロースは高価な砂糖代替品でした。それを、岡山県のバイオ企業株式会社「林原」がでんぷんからトレハロースを生成する微生物を発見してから、大量生産が可能になり安価で手に入るようになりました。
クマムシやシーモンキーの卵は乾燥状態になると、体内のグルコースをトレハロースに変えて乾眠(かんみん)する習性があります。この一見、死んだように見える状態をクリプトビオシスと言います。再び、水分を得ると復活して活動を再開します。面白いですよね。
人工甘味料のメリット
まずは、カロリーを抑えつつ、甘味を感じることが出来ることでしょう。将来的な肥満や生活習慣病の予防につながります。


毎日清涼飲料水を飲む人がダイエット清涼飲料水にかえると、1か月で体重約1kg分の摂取カロリーを減らすことが可能と言われています。
以下にメリットをまとめてみました。
・砂糖と比較して食後の血糖値の上昇を抑えることが出来る。
・減量効果
・肥満・生活習慣病の予防効果
・非糖質系統なので、微生物の発酵がなく酸の生成がないので虫歯予防になる。
・オリゴ糖は腸内の善玉菌を増やす効果があり、整腸作用がある。
人工甘味料のデメリット
ヒトの「味覚」のうち、「甘味」は脳内に「美味しい」という快楽を与えて、生きていくために本能的に食べるという行為を続けていくことが出来るようにしてくれている。


しかし、人工甘味料の摂取は本来、「甘味」を感じると血糖値が上昇する仕組みに慣れている脳が混乱する可能性はあります。
以下にデメリットをまとめてみました。
・人工甘味料の「甘味」が食べ過ぎの誘因になる可能性がある。
・腸内細菌叢が変化して耐糖能異常が引き起こされる可能性がある。
・余計なカロリー摂取が、将来的な体重増加や2型糖尿病を招く危険性がある。
まとめ
日本でも幅広く、食品添加物として人工甘味料は使用されています。過剰摂取は脳への興奮作用や過食の原因となる可能性があります。
人工甘味料と上手に付き合っていけば減量効果や肥満予防効果もあります。
日頃から、手にする食品の裏の添加物表を見てどんな人工甘味料が添加されているのかを勉強しましょう。
まだまだコロナ禍は続きますが、女性の皆さん、男性の皆さん、そして妊婦の皆さん、頑張っていきましょう。
=参考リンク=
人工甘味料の特長を知って賢く利用 金沢医科大学衛生学准教授櫻井 勝 先生
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