痔の治療:術後のはなし|男性の方も必見です。手術後の過ごし方について解説

健康習慣

おはようございます。
川崎市立多摩病院産婦人科医師です。
本日は痔瘻根治術後の治療の続きをお話しします。

座浴について

・毎日の浴室での座浴+シャワー
お尻をついての普通の入浴はまだできません。
・部屋のトイレでの座浴
創部を清潔にし、血流を良くして治癒を促進します。

11番の扉を開くと、コンパクトな浴槽、シャワーが完備され、さらにトイレもついていた。入浴中に便意をもよおした時にすぐに排便できるように配慮されている。

そして浴槽の底部からは泡が常時出るように調整されいる。ただ、普通に座ることは出来ない。スキージャンプでスタート地点にいるしゃがんだ姿勢である。これで患部に泡が当たり創部を洗浄+血流促進してくれるのだ。

これは気持ちいい。浴槽の前と側面に取っ手が付いている。これにつかまってしゃがむのだが、ある光景が脳裏に浮かんできた。

まさかとは思うが、私が子供のころにテレビ放映されていた「チキチキマシン猛レース」の一場面の如くレース途中で車の屋根や側面が吹っ飛び車内が丸見えになる。

あるいは「8時だよ全員集合」のコントの最後のセットの家が徐々に倒壊していって部屋の中が丸見えみたいなことにはならないだろうか?この浴槽に取っ手につかまって泡風呂に入っている状況はやはり滑稽である。

「え?何してんの?」と言われた時用に、スキージャンプ⛷の高梨沙羅さん愛用のバスクリン®のロゴ入りの帽子をかぶっていた方がいいかもしれない。

考え過ぎである。しかし、やはり普段通り座って入りたい。4日ぶりの風呂で心身ともにリフレッシュできた。あとは、排便待ちである。

あらためて手術方法について

・肛門筋を温存する痔瘻根治術
日常生活で普通に排便出来るようにしてくれます。
術後の出血と浸出液はしばらく継続します。

術後2日目に執刀医の先生に、今回の手術内容について詳しくお話しして頂きました。
50代半ばの中肉中背の眼鏡をかけた長身の先生でした。

肌が非常に白く、往年の鈴木その子(痩せたい人は食べなさいがベストセラーとなりました。)、もしくは熱海の秘宝館の入り口の蝋人形かというぐらいの白さである。

術前には3つの痔瘻があると言われていましたが、直近の術前検査では1つはほぼ枯れて消失していたそうです。そのため2つの痔瘻根治術となりました。

要は、いかに肛門括約筋を温存して一生オムツを予防するかにかかった、最新の術式である。自分のカルテに自分の肛門の写真がたくさん貼付されていたのには驚いた。

この写真を見ながら熱海の秘宝館の館長は丁寧に説明してくれた。なんと、今回行った手術では肛門粘膜からのアプローチは全く無いのである。

つまり排便をしても粘膜内に創部が無いため、感染予防にもなるのだ。すごい! しかし、痔瘻の皮膚側はわざと縫合せずに自然閉鎖を待つ形になるため、出血は持続するとのこと。

これでやや術後第一排便の不安は拭い去られたかに見えたが・・・。

術後初回排便について

・個人差もありますが、最初は排便の感覚が鈍いです。
・緩下剤と十分な水分摂取が必要です。

術後3日目の朝である。朝食後にいつもと違うおなかのゴロゴロ感である。S状結腸から直腸にかけて圧迫のあるガス感である。

このまま一生わが肛門は枯れてしまうのかと不安に思っていたが、一筋の光が枯れて無くなりかけた肛門に、うっすらと差し込んできた。

ただ、術後2日も排便が無い。普段では毎日やや硬いながらも排便はあった。この術後の肛門は術後の排便に耐えられるのだろうか。ワキ汗ぐっちょりである。

マグラックス®は毎日内服しているものの、もしも装甲車の如くフル装備でコーティングされた便だったら、たちまちわが肛門は木っ端みじんに破壊され、人工肛門行きとなるであろう。

あるいは台風直撃の多摩川の如く、警報前のダムの計画放水で全く関係の無い下流の方々にご迷惑をかけてしまうかもしれない。どうしよう。

さて、困った。そんな心配をよそに、フル装備コーティングのヤツがわが術後の肛門に迫りつつある。直腸下部に何となく異物感がある。

間違いなく本日第一排便がある。うれしさと不安が入り乱れる中、看護師さんからの言葉を思い出した。

「もう、これ以上は漏れるというところまではトイレへ行かないでください。」、「いきむのは、5秒以内にしてください。」

普段なら便意をもよおしたらトイレへ行き、腹圧をかけてやや強引な上手投げで排便をしていたが。いきむの5秒って、肛門の途中でフル装備にコーティングされた便が立ち往生したら、どうなるんだ。

ヤツは容赦なく、我が直腸下部の第一ドアを執拗に叩き始めた。内側からドアを叩き返しても、なんのそのである。「入ってますよ」の牽制球にもびくともしない。

そうこうしている間に、フル装備コーティングのヤツの後方から援軍が駆けつけてきた。更にドアを叩く音が激しくなってきたのだ。

ドアの一部が破壊されたようだ。かなり強力な便意がやってきた。便意と共に排ガスがあったのだ。もう城内突入5秒前である。

これならトイレへ駆け込んでも看護師さんは許してくれるであろう。便座に座ってもまだ、いきんではいけない。

座ってからしばらくすると第一ドアは粉砕し、ヤツらは雪崩の如く我が城内に突入して来た。いきむタイミングが分からないのだ。あの強烈だった便意は消失していた。

しかし、時々メディアで放映される中国や北朝鮮の軍事パレードの如く隊列の軍人達は我が物顔で城内を通り過ぎて行った。

直腸下部から肛門にかけては、まだ、借りてきた猫状態なのだ。あれ、出ているのか?という具合である。マンガの如く肛門だけ無くなり、ブラックホールにはならなかったようだ。

ソフトバンクホークスの日本一パレードの様なフラッシュにはご注意くださいも無い。静かである。静寂の中の鹿威しの音も無いぐらいに。

結局、あまりいきむ事無く、約10秒程で城内からヤツらは出て行った。城内は炎に包まれる事も無く、誰ひとり犠牲者も無く、便器が真っ赤に染まる事も無く、気づけば戦いは終わっていた。

ヤツらの殿(しんがり)が出て行くのを見届けて、閂(かんぬき)を閉ざした。しかし、まだ勝敗の行方がどうなっているのか、顔を見合わせる者が多かった。

確かにその通りである。どちらが勝者なのか?肛門は無事である。期待していた真っ赤に染まるような派手な殺陣(たて)のシーンも無い。

そしてヤツらは出て行った。ん?これは戦だったのか?誰もが疑問に思うだろう。当然である。しかし、間違いなくこれは戦である。

肛門に命を捧げた聖戦なのだ。多分。事実、ヤツらの数は有に1万人に越えていた。城内から出た後はあちらこちらで隊列は崩れていたが。

フル装備のコーティングは無かったようだ。粋なはからいである。フル装備のコーティングで攻められていたら‥。考えただけでもゾッとしてしまう。

しかし、ヤツらは明日もやって来る。明後日も。戦はまだ始まったばかりである。

まとめ

・重要なのは、『便は出すのではなく、出るもである。』という先生からのありがたい言葉にしがって日常の排便に気を付けるということです!
・特に女性の方や妊婦の方は便秘傾向ですので十分な水分摂取と食物繊維の摂取と緩下剤の併用が重要です。

・肛門周囲の創部の血流を良くするために、座浴で洗浄は欠かせません。
・便が硬くならないように普段よりも意識して1.5-2.0Lの水を摂取するようにする。
術後4-6週間は創部から浸出液が出てきます。そのため専用パットが必要です。
・痔瘻は再発しやすいので、おかしいなと思ったら専門医を受診しましょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

まだまだコロナ禍は続きますが、男性、女性、妊婦の皆さん、今日も頑張っていきましょう!

 

 

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