ヒトの腸内細菌叢(腸内フローラ)には約1000種・100兆個の腸内細菌の群れが棲みついていると言われています。また我々の腸は人体に存在する免疫細胞の約70%が集中する最大の免疫器官でもあります。このため、腸内環境が悪化すると、免疫機能は低下します。
さらに、腸脳相関と言って脳と腸も密接に関係しています。ストレス過多の状態が継続すれば、腸内環境も悪化します。逆に腸内環境が悪ければ、脳にも悪影響を及ぼします。腸内環境によって性格・人格・体質・寿命にまで影響すると言われています。
日本人は代々長寿型腸内フローラを持っていましが、最近のジャンクフードなど超加工食品などの影響で失われつつあると言われています。
腸内環境を整えましょう
朝から副交感神経優位にスイッチを切り替える


起床後にまずやって頂きたいことは、できれば朝食を摂るということです。ファスティングなどで朝食を抜いている方は常温水 500mlを飲んだり、水が苦手な方は強炭酸水でも良いと思います。食べたり、飲んだりする事で“胃結腸反射”を起こし、腸の蠕動運動を促進してくれます。以下の記事もご参照ください。



高血糖を回避する


精製された白い炭水化物の過剰摂取は血糖値スパイクを引き起こす原因になります。また高血糖状態が継続すると、免疫機能にも悪影響を及ぼします。好中球の機能低下、腸管バリア機能低下を起こし免疫機能低下を招きます。低GI食は血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。以下の記事もご参照ください。



夕食のタイミングを気をつける


腸内フローラを若返らせるためには就寝3時間前には夕食を済ませるのがタイミングとしてはベターと言われています。
腸内フローラ若返りのゴールデンタイムは22時から2時までと言われています。
副交感神経優位になると善玉菌が増加すると言われています。夕食が善玉菌のエネルギー源になるわけです。
適度な運動をする


アスリートは腸内フローラの質が高いと言われています。運動すると腸内フローラの質が高くなります。善玉菌を数倍に増殖させる効果が期待できます。1日45分前後の運動を週に3-5回のペースで行う事が大切です。ウォーキングなど軽い運動がベターです。
長時間の有酸素運動は逆に腸内環境を悪化させてしまうのでオススメできません。
自然の中で過ごす


自然の中での深呼吸しましょう。自然の大気中の微生物が吸気で腸に届き腸内環境を正常化してくれます。自宅の部屋や仕事場に観葉植物を置くことで、有害物質の除去作用、室内の有益な微生物を増やしてくれる作用が期待できます。脳にも良い影響をもたらしてくれて、良いアイデアが浮かぶ、疲労や頭痛を改善してくれる、メンタルや気分を良くしてくれる効果も期待できます。以下の記事もご参照ください。



ストレスを減らす
最近の調査では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状消失後も後遺症が続くCOVID-19罹患後症候群(PACS、別名long COVID)の腸内細菌叢との関連性について、4分の3の患者で疲労や筋力低下、睡眠障害などの後遺症が継続し、その患者の腸内細菌叢の多様性と豊かさが乏しいことがわかりました。これを見ても長期のストレスは腸内環境を悪化させてしまい、脳にも悪影響を及ぼす可能性を示唆しています。
“脳が喜ぶ”食材を摂取しましょう
腸内環境は約60%が我々が毎日食べるもので決まると言われています。密接に関係する腸内環境・免疫・脳に良い影響を及ぼしてくれる食材を摂取しましょう。多品目の食事を摂取して、多様性に富んだ善玉菌を育てる事が重要です。発酵食品・食物繊維・オメガ3脂肪酸を中心に、これらを組み合わせて摂取していきましょう。
GABAを摂取しましょう


名前を聞いたことがある方も多いと思います。γアミノ酪酸の略です。働きは脳や脊髄に作用して交感神経の働きを抑制しストレスを緩和したり興奮を抑える役割です。脳血流量を増加し、酸素供給量を増大させたり、脳細胞の代謝機能を高めてくれます。
実は腸にもGABA受容体があり、脳と腸を繋げる迷走神経を介して脳や身体に作用します。また、GABAには睡眠の質も上げてくれる効果もあります。
多い食材:玄米(白米の数十倍含有しています)
精製された白い炭水化物(白米・パン・うどん・ラーメン・パスタなど)を摂取する代わりに玄米・雑穀米・オートミールを白米にブレンドしたものを主食にしてみると良いと思います。
“免疫が喜ぶ”食材を摂取しましょう


グルタミン
小腸粘膜の絨毛や上皮細胞の原料になるアミノ酸の1つです。他にはヒツチジン・ビタミンA・亜鉛なども必要です。絨毛のターンオーバー(再生)には、ビタミンB群、マグネシウムなども必要です。
グルタミンの作用には、免疫系の活性化、腸管のバリアの機能維持、グルタチオンの材料になるなどがあります。
多い食材:生卵、大麦、生魚
グルタチオン
グルタミンからつくられます。グルタチオンは抗酸化物質であり細胞・組織の保護作用があります。
オメガ3脂肪酸


免疫機能全般の栄養素になります。腸の炎症を抑制し、善玉菌が増加しやすい腸内環境に整えてくれます。
代表例は、皆さんもご存知のDHA/EPAです。あとαリノレン酸もそうなんです。
αリノレン酸:エゴマ油、亜麻仁油などに多く含まれます。ドレッシングとして使用するとか、そのまま料理にかけたりできます。
EPA/DHA:青魚のサバ・イワシ・アジなどに多く含まれています。缶詰で摂取するのがベタ-ですね。
最近の研究で大腸がんの促進を抑制する因子として認められています。さらに、潰瘍性大腸炎の炎症を抑制してくれたり、魚中心の食生活は発がんを促進する胆汁酸を減少してくれるとうい報告もあります。うつ病の予防効果もあると言われています。
EPA/DHAは酸化しやすく過酸化脂質が出来やすいため新鮮なうちに食べましょう。
“腸が喜ぶ”食材を摂取しましょう
食物繊維
大麦・もち麦など
水溶性食物繊維が豊富です。 ひきわり飯:米と大麦のブレンド
効果
大腸内に存在する善玉菌の栄養源になり善玉菌を増やす
腸内環境が正常化して悪玉菌の増加を抑制する
排便力がアップし老廃物の滞在時間が短縮し便秘解消になる
大腸の表面細胞を正常化しがん細胞に変化するのを予防する
βグルカンも豊富に含まれています。
βグルカンには、整腸作用、腸内細菌による発酵促進、胃粘膜保護作用、腸管免疫の賦活作用、感染防御作用、抗アレルギー効果が期待できます。
ごぼう
ごぼうには水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方を含んでいます。その中のイヌリンには非常に腸には良い効果があります。
イヌリンは水溶性食物繊維の1つで天然のオリゴ糖の1つです。
作用としては、利尿作用、腸内の善玉菌を増やしてくれる作用、満腹感を感じさせてくれるて食欲を抑制する作用、短鎖脂肪酸やGLP-1など食欲抑制ホルモンの分泌を促進してくれる作用があります。
発酵食品


ヨーグルト・味噌・納豆・キムチなど
善玉菌のえさになったり、腸内を弱酸性に保持し悪玉菌の増殖を抑制してくれる作用があります。
我々の腸内フローラには、脂肪を燃焼して痩せやすくしてくれるバクテロイデス門(痩せ菌と言われている)という菌がいます。この菌は食物繊維が大好物で短鎖脂肪酸を産生してくれます。この短鎖脂肪酸は我々の身体に有益な効果をもたらしてくれます。
短鎖脂肪酸の凄さ
短鎖脂肪酸には、プロピオン酸・酪酸・酢酸の3つがあります。
プロピオン酸
腸内のエネルギー源として使用され、悪玉菌の増殖を抑制してくれます。
腸のバリア機能を修復してくれます。
酪酸
大腸の粘膜上皮のエネルギー源として60-80%使用されます。
免疫力の向上、抗炎症作用があります。
体内にいる免疫細胞と出会うとTレグという物質になります。このTレグは、免疫細胞が暴走を起こさないようにするスイッチ役をしてくれます。全身の炎症やアレルギー反応を抑えてくれる働きがあります。酪酸菌の一種クロストリジウム菌が発酵性食物繊維を食べると酪酸を大量に産生してくれます。
酢酸
強力な殺菌作用・抗炎症作用・代謝促進作用があります。
発酵性食物繊維を餌にして腸内細菌が産生してくれる物質の1つです。
プロピオン酸と酢酸の効果
脂肪細胞にあるGPR43に働きかけてインスリンの分泌を抑制してくれて、肥満予防効果があると言われています。
プロピオン酸と酪酸の効果
短鎖脂肪酸受容体に働きかけて食欲を抑制してくれます。
交感神経を刺激して体温上昇やエネルギー代謝を促進してくれます。
他の作用としては、大腸の蠕動運動を促進してくれる作用、脂肪細胞が栄養分を取り込むのを抑制し、脂肪燃焼の促進効果や便秘改善もあります。
また、脂肪・糖を貯め込むフィルミクテス門(デブ菌と言われている)という菌も腸内フローラには存在します。元々ヒトの腸内環境はデブ菌が多く、増えやすいと言われています。飢餓時代にはカスからでも栄養を取り込む人類が生き残るためにデブ菌は救世主だったためと言われています。しかし、現代食で脂肪・糖の過剰摂取は腸内環境をデブ菌優位にしています。
痩せ菌が大好きな食材
①納豆:納豆菌の圧倒的な繁殖力でデブ菌も減らすことができます。
②もち麦:大豆の一種で水溶性食物繊維が豊富です。
③豆腐:大豆オリゴ糖が善玉菌のエサになります。
④キノコ類:食物繊維のバランス良いです。
⑤バナナ:オリゴ糖が含まています。
善玉菌を増やす食物繊維のバランスは不溶性食物繊維/水溶性食物繊維が2:1が理想と言われています。
まとめ
腸内環境を整える
・朝から副交感神経優位にスイッチを切り替える
・高血糖を回避する
・夕食のタイミングを気をつける
・適度な運動をする
・自然の中で過ごす
・ストレスを減らす
“脳が喜ぶ”食材を摂取する
・GABAを含む玄米などを摂取する
“免疫が喜ぶ”食材を摂取する
・グルタミン・グルタチオン・オメガ3脂肪酸を摂取する
“腸が喜ぶ”食材を摂取する
・食材を摂取する
・発酵食品を摂取する
・短鎖脂肪酸を増やす
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