こんにちは!
川崎市立多摩病院産婦人科医師です。
本日は、人間の「考える力」の弱点からくる、「不安」と「情報過多」との付き合い方についてお話したと思います。皆様のお役に立てれば幸いです。
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考え過ぎないことが大切
人間は他の生物と比較して特に優れている点は「考える力」を持つところです。この「考える力」を発揮して高度な文明を発達させました。
しかし、「考える力」にも弱点はあります。それは、考え過ぎてしまうということ。思い悩んでしまうということ。そして、決断できないということです。
これらにずっと縛られてしまうと不満足な人生になってしまいます。これらの不安は誰でも生きている限り抱くものです。これら「不安」の素を大きくしないためにはどうすればいいのでしょうか?
人間はやってしまったことに対する後悔をよく憶えています。これは短期的です。しかし、やらなかったことへの後悔は強く憶えています。
こちらの方が長期的で時間の経過とともに高まる傾向にあります。これは人間の脳の仕組みに関わっているようです。
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「不安」という感情は何故人間に備わっているのか?
我々人類が地球に誕生した約20万年前の旧石器時代では、もちろん現代と違って狩猟採集生活によって命をつないでいました。おそらく3-4日ぐらい獲物が無く、水のみという過酷な環境が当たり前だったでしょう。
「進化心理学」の面から考えると、旧石器時代と現代とでは行動原理自体はほとんど変化がないそうです。つまり、我々人間は少しずつ進化はしているものの、周りの環境の方が急激に変化してるだけのようです。
旧石器時代の人間の行動原理の「不安」という手段は現代もほぼそのまま残っているということです。
この「不安」によって人間は動くわけです。「不安」があるからこそ現代の人類は生き残ってこれたのです。「不安」を感じずに行動できなかった遺伝子を持つ人類は危険を察知できずに生き延びることが出来なかった。
草むらのゴソゴソしているのは毒蛇ではないか?あの向こうにある木陰で動いているのはトラではないか?など常に「不安」をアンテナにして危険を察知し、回避してきたわけです。
現代の我々は何を「不安」に思うのか?
ヒトを取り巻く環境は激変しました。命を落とす危険が少なくなった現代に我々はこの「不安」とどう付き合えばいいのでしょう。「情報過多」という言葉があります。
この情報量の多さは甚大です。我々が1日で受け取る情報量は、たった150年前ぐらい前の江戸時代の情報量の約1年分だそうです。
おそらくは我々が受け取る情報のほとんどは無益な情報だと思います。先の分からない未来のこと、他人の言動、ネガティブな情報などなど。そして、ネガティブバイアスによって頭の中は「不安」だらけになってしまう。
結局は周囲の劇的な変化に対応するだけの、この抗「不安」防御を備えていないのです。だから我々はこの「不安」を上手に使い、上手に付き合っていく方向にシフトするほうが良い選択だと思います。
情報が多いからと言ってよい選択ができるとは限らない。
実は「考える力」というのは、「無意識下でその力が発揮される」と言われています。つまり、我々の脳は無意識下で勝手に情報の取捨選択をしてくれているのです。
「情報過多」により脳が混乱を生じると、物事を単純に大局的に考えられなくなってしまうようです。結果的に良い選択が出来なくなってしまう。単純に以下の思考で行けばいいのです。
・細かいところに目を向けない。(大局的に考える)
・情報を調べる時間を決める。
「締め切り効果」でノルアドレナリンが分泌し、効果的に収集できる。思考の無駄を省き、より素早い行動につなげることが出来る。
「不安」とうまく付き合う方法
・幸福と健康を高める。
・「過去と他人」は変えられないことを受け入れる。
頭を切り替えて、これからできることを考え、他人ではなく自分を変える努力をしましょう。いつでも自分は変えることが出来ます。
・人生の最終的な勝ち負けというのは無い。
我々の頭からこの「不安」をゼロにすることはできません。上手に付き合っていく選択をすることが我々の人生において賢明だと思います。
まだまだコロナ禍は続きますが、妊婦の皆さん、男性、女性の皆さん、今日も頑張っていきましょう!
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